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「あー、遅かったな。」

海と二人で、つい十分ほど前まで店だった場所に戻ると、陸が一人でハンマーをぶんぶん振り回していた。



 

その行為に特に意味は無いということは、誰の目に見ても明らかだ。

陸の周囲を見渡すと、所々円形に陥没した地面と、何だか分からない、黒い塊のようなものが大量に転がっていた。

その中の一つを拾い上げてみる────と、それは人の腕だった。

慄き、何処かへ投げてしまいそうになる自身を辛うじて抑え、その腕を眺める。

Aは人型か・・・。二の腕辺りを鋭利な刃物か何かでザックリと持っていかれている。そこから判ずるに、これは海による攻撃の痕だろう。

腕、掌、指先、そして切り口から覗く肉までも、全てが全て、黒い。

血も流れてはいないし、そもそも真っ黒で血管が通っているのかどうかも判別が付かない。

これなら、もし相手がAでも躊躇いは起きにくそうだ。

ふと、その腕を眺めている僕を陸が眺めていることに気づいた。

「・・・何?」

「いや、お前って人の腕を見ても無感動なんて太い神経を持ってるんだなと。」

「まあ、こーいうのなら腕っていうより腕の形をしたモノって感じ。動いてないなら柔らかいマネキンと大差ないってだけ。」

「そか、じゃあお前にはなるべくタイプA・・・人型は回さないよう留意する。」

陸もこちらに気を遣ってくれたのだろう。人の形をした動くモノを破壊するという行為に必要な覚悟、それを考えての提案だろう。

人の形を破壊する、それを想像するのは簡単だ。

そうできる環境を整えることだって、難しいことじゃあない。

一番難しいのが、実行に移すことだ。

体力的にとか事後処理とかそんなチャチなものじゃあ断じて無い。まともな精神を持ち合わせたうえで、人一人の人生を終了させる覚悟、それを持つことが出来るか否か。

無論、さっきの黒犬のときのように無我夢中になればそんなことは些細なことになるのだろうが、それは同時に冷静さを失うことであり、それは戦闘における重大的な欠陥というかリスク、ハンデを負った状態で戦うこととなるので、結果的にプラスになるとは言い難い。

でも、その覚悟も持たずにこの戦場を陸や海と共に駆け抜ける、なんてことは端的に言って無理だと思う。だからこそ、

「うんにゃ、別に構わんよ。直接的な打撃ならまだしも、光弾を使っての遠距離射撃なら特に気にはならないから。打撃の方だってそのうち慣れるでしょ。」

「へえ、最近の子供にしちゃ中々ふてぇ奴だな。それでこそ、仲間に入れるに相応しいってか。」

「あー、まぁ仲間云々は半ば強制てk・・・いや、うんそうだね仲間だね!」

何か後ろから物凄い殺気を感じた希ガス・・・ 18族。

後ろを振り返る勇気は無かった。

その後、海は何やら一人で顔を伏せ、集中しているようなので邪魔をしないように陸と適当に話を続けた。

やがてというには早い、2分ほど経ったところで海が顔を上げた。

「残骸データ収集完了。周囲に敵の反応も無いわね。」

「あいよ了解。データを回してくれ。」

了解、と海が続けた後、僕と陸の目の前に半透明の青いウィンドウが出現した。

ウィンドウには何やらよく分からない文字が羅列されていて僕には全く分からないが、陸はそれを見てうんうんと頷いている。

「参考までに訊くけど、陸、これって何?」

「さあ、知らん。」

「( ゚Д゚ )」

「ちょ、こっち見んなwwwwwwwwwwwwww。」

いや、おま、それはねぇだろ・・・

「陸、冗談は止めなさい。空にはエンコーダを渡して無かったわね。」

言うと、海が何やらこちらに放る動きを取った。途端、ウィンドウの文字が猛烈な勢いで書き換えられる。


タイプA:5
タイプB:0
タイプC:7 亜種2
タイプD:0
タイプE:0


その五行と、殆ど世界地図そのままのマップ。マップには所々赤い点が記されており、世界の各所という各所に散らばっていた。

「これは敵の出現分布表よ。他チームともコレだけは連動してて、戦跡が逐一逐次時間と共に記録されるわ。」

「ふぅん・・・なら合流しようと思えば結構簡単なんだ。亜種ってのは?」

「亜種は他と若干造りが違うものね。形であったり性能であったり。優っているものだったり劣っているものだったり、ね。それも私たちの侵入による誤作動、バグかもしれないから記録されているの。」

ふむ・・・ 地図を眺めてみる。現在位置を示すのだろう、日本の関東近辺で黄色の光が点滅している。

世界を見渡すと、所々で新しく赤い点が点き続けている所もある。防御の硬い、重要な部分なのだろう。

と、現在地のすぐ近く、関東県内で一箇所、恐ろしい速度で赤い点が増殖していっている部分がある。

10や20ではない、100までは行かないにしても四捨五入すれば100になる値には達しているだろう。

それが今なお増え続けているのだから、現場ではどうなっているのか安易に予想がつく。

それに気づいたのだろう、海が陸の方を見る。僕も釣られて陸の方をを見ると・・・・・・

陸は舟をこいでいた。

「こら。」

海は、前触れも無く予備動作も何も無く、ローブの隙間から陸が戦闘で使ったのと同じ符を陸に飛ばす。

陸はそれが爆発する寸前に正気に戻り、急いで飛びのく。

「な、何すんだ!人がせっかく気持ちよく寝・・・じゃない、次の作戦を練ってたところだってのに!」

「はいはい分かったから地図見なさい地図」

「無視っすか・・・」

せめて突っ込んでくれよ・・・などとグチグチ呟いたが、その表情は地図を見て一変した。

「んあー、これはちぃーとばかしまずいかも試練な。空はどう思うよ?」

いきなり話を振られて逡巡する。少し間をおいて、

「様子見くらいはしに行くべきかな。全員が戦闘に特化した能力ってわけじゃないんだろ?だったらそこの人は激しくピンピンチかも知れないし、行ってみて全て終わってるようならめでたしめでたし。まだそこに人が残ってるようなら情報交換も出来る。どう転んでもマイナスにはならないと思うな」

「ま、その辺だな。空は飛んで先に行ってくれ。俺と海はこのとおり飛べないから走って行くしかない。この距離ならお前の翼で2分、俺等が走って6分ってとこだな。最悪戦闘中なら、遠距離からの支援だけでもいい。4分持たせてくれ」

「りょーかい」

僕の返答を聞くが早いか、さっきの座標に向かって二人は全速力と言えるような速度で走り出した。

それを翼を用い全力で追いかけ、追い抜き、突き放す。少しだけ振り向き、手を振る。海は陸についていくので精一杯だったようだが、陸は笑って手を振り返してくれた。

それを確認して、翼に全力を注ぎ全速力で飛翔する。

もっと早く。

もっと速く。

もっと疾く。

この先に訪れる未来を知らずに。

 

後になって思えば、僕には決定的に覚悟が圧倒的に足りなかったたんだ。

傷つける覚悟ではなく、傷つけられる覚悟が。

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