ようこそ我が家へ
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 最初に動いたのは陸だった。 砂煙の上がった戸口に向かっていくつか、古い中国の映画に出てくる呪符のような長方形の紙を投げつける。
と、次の瞬間立て続けにその場で爆発が起こる。 飛び散る木片と、それに混じる黒い塊。 それを何か確認する前に、僕の体は陸によって窓から外へと投じられた。 翼を羽ばたかせてバランスをとり、外にうまく着地する。痛みは無いので、背中にガラス片が刺さったりはしていないようだ。 海も隣の窓から脱出してきたようで、中の様子を見ている。 見てみると、陸が放射状にに符を投げている様子が見えた。 と、次の瞬間。店が沈んだ。 爆散とまでは行かず、建物が崩れ落ちていく感じだ。 その一刹那前、陸は僕を投げ込んだのと同じ窓から転がり出てきた。 爆発の風圧に押され、僕のときよりも強めに飛ばされて転がる。 しかしすかさず体勢を立て直し、右腕にはいつの間にか、自身の身長程もある大振りなハンマーを握っていた。 「海、敵は!?」 「タイプAが5つ、タイプCが7ってところね。さっきの爆発でAが2つ、Cが3つ沈んだわ。」 「オーケィ!空は上空からあの光の弾丸で上空から支援してくれ!アイテムは渡してある!」 先ほどまでと打って変わり、戦闘に全ての思考を向ける陸。そしてそれをサポートする海。 ただ立ち尽くす僕を尻目に、黒煙立ち込める建物の残骸へと走りこむ二人。 とりあえず指示通り槍を出し、黒煙の上る上空へと舞い上がる。 アイテムを確認すると、攻撃アイテムやら回復アイテムやら武器やら防具やらステータスアップのアイテムなどが追加されてた。 装備を整え、ステータスアップアイテムを全て使い、己が身を強化する。ステータスを確認すると、さっきとは比べ物にならないほどパワーアップしていた。 「陸、右30度の方向7メートルにC1つ!」 「はいよ!」 時折そんな声が聞こえてくる。打撃音、声、打撃音、声。時々聞こえてくる斬撃のような音は海だろうか。 ここからでは二人が何と戦ってるのかさえも見えない。二人がどこにいるか分からない以上撃つ訳にもいかず、ただ浮遊している。 ただただ黒煙を見つめていると、ふと犬のようなものが黒煙の中から飛び出してきた。 「空!その逃げ出したCを仕留めて!」 ぼーとしていたので反応が遅れる。文脈からしてあの黒犬が海の言うCなのだろうと一瞬送れて判断する。 「は、はいよ!」 その一瞬の間、返答の合間にも黒犬はどんどん離れていく。僕は翼の加速でそれを追う。 最初とは比べ物にならない翼の速度に目を開けていられなくなる。 「ゴ、ゴーグルゴーグル・・・」 確か翼の装備にはオプションとしてゴーグルが付いていたはず、とアイテム欄を確認。 見つけた、早速それを装備する。これでさっきの黒犬が・・・ 「居ない!?」 さっきまでの速度、向きで等速直線運動を続けていたならばその黒犬が存在するはずの座標にそれは存在しなかった。 ただただ無人の町並みが広がるのみだ。 「どこだ、どこに消え・・・ ッ!」 捕らえたのは聴覚だった。後ろからヒュゥゥンという風切り音が近づいてくる。 とにかく翼を使い急速で縦に降下する。 と、さっきまで僕の居た空間を大口を開けた黒犬が通過した。どうやら後ろにある3階建ての建物の上から跳んできたらしい。 黒犬は目当てのものが捉えられなかったことを悟ると、空中でこちらに向きを変える。 しかし犬に空を飛ぶ力は無い。着地してから間髪居れずに食いつく算段なのだろう。 しかし、甘い。NPCにこういったことを説くのも酷だが、こういった能力が未知数の相手に対しては常に遠距離から相手の能力を推し量るべきだるのだ。 「ゲームと言えどリアルさを追求したもの、重力に従った着地なら落ちている間と着地の瞬間に隙が出来る!」 そう、今ので僕をしとめられなかった黒犬は既に負けが決したも同然である。 着地の寸前、槍の先から光弾を20ほど立て続けに放つ。これもまた速度、弾の大きさともに強化されている。 倒壊する建物。立ち込める砂煙。そして・・・ その中から砂煙を引いて飛び出してくる黒い犬! 「チィッ!」 体勢を立て直し、バッターよろしく槍で振り払おうとする・・・ が、間に合わない。 右腕が持っていかれると、そう思い目を瞑る。 しかし、いつまで経ってもその瞬間は訪れなかった。 おっかなびっくり目を開け、周りを見渡すと、地面に足が二本千切れ、首の切れた黒犬の死骸と、禍々しく大きな鎌が転がっていた。 千切れたような二足が僕の攻撃の跡なのだろう。すると、この鎌の持ち主は・・・ 「ったく、危なかったわね。まぁ、初陣で足二本なら大したもんよ。うちのチームじゃシミュレータで敵に傷一つ負わせられない奴だって居た位だし。」 まぁ無論そいつは死ぬほどしごいたけどね、と明るく言うのは、海だった。 黒いボロ布のようなローブはさしずめ死神をイメージさせるものだったのだろう。なるほど、鎌か。 引き抜いた鎌と相俟って雰囲気が半端ではない。なるほど、陸が恐れる理由にはこういうのもあるんだろうなぁ・・・ 「何かこの状況と関係の無い、とても失礼なことを考えてない?」 海が笑顔で、それも恐ろしく恐ろしい笑顔で問いかけてきた。 「いや、いやいや、そんな滅相も無い!助けていただきまっこと感謝感激雨霰の極みでございますです!」 「そう?ならいいんだけど。それにしても、悪かったわ。あなたにとっては殆ど初戦みたいなものでいきなり1対1なんてさせちゃって。レベルだってアイテムで強化していても一桁なことに代わりはないし・・・ 悪かったわ。」 そのことについては本当に反省しているようだった。 まぁ、僕がしとめたと思い油断したのが悪かったんだけど。 「そろそろ陸も全員終わった頃でしょう。陸のところに帰るわよ。」 「ああ。」
こうして、僕の初戦は苦々しい思い出ともに終わった。 PR |
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