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「あー、遅かったな。」

海と二人で、つい十分ほど前まで店だった場所に戻ると、陸が一人でハンマーをぶんぶん振り回していた。

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最初に動いたのは陸だった。

砂煙の上がった戸口に向かっていくつか、古い中国の映画に出てくる呪符のような長方形の紙を投げつける。

僕は海、陸と共に最寄の街のとあるレストラン調の店に来ていた。店員は居ない。アイテムを買う店とは違う、ある種のおまけ、もしくは地形効果的な要素で組み込まれた店だろう。

「協力?」
「そ、協力。いや、共闘?それとも空はまだ弱いから・・・庇護?そう、庇護してあげる。」
はい?庇護?えーと、とりあえず前回までを思い出そう。作者がサボったから先週先々週は抜けてて・・・
いや、ごめんなさい。
そうそう、脳がどうこうで、僕が空で、その他諸々・・・ うん、思い出した。
「で、なんだっけ?」
「思い出してないじゃないの・・・」
モノローグへの突っ込みは禁止です。
「えっと、とりあえず最初から。庇護って何の話かな?」
海は、大げさに大きなため息をついて、
「まず核心から話すけど・・・このゲーム、いえ、このゲームの完成体は、『殺戮ゲーム』なのよ。それも本質の意味での。単刀直入単純明快に言えば、ここで殺された人間はリアルでも死に至る。」
へ?え?え゛!?
脳がどうこうって部分で多少のぶっ飛び展開は予測してたけど、これはひどい。
ボディを打って相手の動きを止めた後、顔面にストレートをぶち込み、そのまま親指を目の中につっこんで殴りぬけるなんて目じゃない比じゃないレベルじゃない。
驚愕に目を見開く僕を尻目に、海は淡々と、訥々と説明を続ける。
「で、それを事前に察知し、止めようと立ち上がったのが私たち。世間一般ではハッカー、クラッカーと呼ばれてる種類の人間達ね。このゲームの登録キャラ中3割が私たちの仲間の日本人で構成されているわ。所謂・・・梃入れって奴かしら。ある筋からメールを手に入れて複製して、信用できるクラッカー仲間に協力を頼んだのよ。」
ここまでで、何とか内容が掴めてきた。どうやら僕はとんでもないものに巻き込まれていたらしい。クラッカーの戦争、まさしく文字通り、人類の存亡をかけた勝負なんて。
ところで、
「せんせー、ひつもんです。」
「質問ね、しー、つー、もー、ん。はいどうぞ。」
「ネタをネタと以下略。何故、それに僕を誘う?僕には少なくともクラッカー並みの能力なんて持ち合わせてない。」
「だ・か・ら。庇護って言ったじゃない。庇護、意味分かる?庇って護る。最初は私たちの仲間として戦ってもらおうかと思ったけど、あなた弱いみたいじゃない。でも、死ぬのは嫌でしょう?置いていくなんて義理に厚いを自称する陸が許さないでしょうしね。わが身大事なら一緒に行動しましょうって誘ってるのよ。」
なるほど。それは名案だ。何も問題は無いこれといって問題は無い恐ろしいほど異論も異議も文句も何も無い。
ある一点を除けば・・・ね。
それは古来より古今東西どこでも誰でも使い使われて来た言葉。ご都合主義的な展開もこの一言で万事解決することが出来る、魔法の言葉。
そう、「偶然」である。
偶然、なんと都合のいい言葉だろう。世界の9割は偶然で出来ていると言っても過言では無い。
二人は偶然僕とここで出会い、偶然こういった話を思いつき、偶然僕がそういった行動を取っていた。
言ってしまえば胡散臭いこと極まりないことだ。しかし、まぁ・・・
「二人の言うことを完全に信用したわけじゃない、と防衛線を張ってから答えるよ。答えはOK。二つ返事というかぐしだね。何せ普通と違うことは分かるし、何よりレベルを上げたい。そういった意味では二人と行動するのは僕にとってプラスになると踏んだからね。」
「ふぅん、中々用心深いのね・・・臆病なんだ。うん、気に入ったわ。おーい、陸!あんたもこっちいらっしゃーい!」
名を呼ばれた陸は、まるで飼い主に呼ばれた犬のような勢いでこちらに走ってきた。
僕の脳内で陸という人物は弄られキャラで確定された。不憫なかぐしだ。
海が僕との会話の一部始終を陸に話し、伝わったところで陸が狂喜乱舞したのはまた別の話。
これほど感情の起伏が激しい奴がクラッカーねぇ・・・ 海の口ぶりでは腕の立つ奴のようだけど、胡散臭いな。
まぁ、これからは行動を共にする仲、仲良くするようひとまずは心がけよう。
そう、思った。
「よぉっし空!打ち上げしようぜ打ち上げ!」
「何のよ。」
「何のだよ。」


難しいなぁ・・・

僕は助けてくれた二人と話し込んでいた。何でも、この二人もあいつとは因縁があるらしい。

話によると二人は、女の方が海、男の方が陸というのだそうだ。

海は腰までの長い黒髪で、足まで隠れるような大きな黒いボロボロな外套に身を包んでいる。そのせいでよく分からないが、中身は細身で華奢な体のようだ(推理)

陸は上半身が裸で、ガッチリとした褐色の肌を晒している。下は濃い茶色のジーパンだ。

話の内容から察するに、海はしっかり者、陸は陽気なキャラのようだ。

「───で、お前の名前は?」

ふいに陸に問われた。そういえばまだ名乗ってなかったな。

「僕は他人に名を名乗らないことにしてるんだよ。」

「それなんていーちゃん?」

「ごめん作者の趣味。」

間髪いれずに突っ込みが来た。著作権とか大丈夫なのかこれ?

「ま、冗談は置いといて。僕の名前は空。君達と3人そろったら陸海空なんてね。」

僕の名前を聞いた途端、二人は目を丸くした。陸に至っては口までガコーンと空けている。

まるで、信じられないモノを見たとでも言うような目。しかし、僕にはその意味が分からなかった。

僕が何をしていいのか分からずに立ち尽くして居ると、二人は近くの岩陰に隠れて何かを話し合い始めた。

やがて、陸だけが岩陰から出てきた。そして、グッ!と親指を突き立てて一言

「Hey boi!俺達と一緒に行動しないKAI?」

「だが断る。」

とりあえず断ってみた。

「この空が最も好きな事のひとつは、綴りを間違えた馬鹿にNOと言ってやる事だ・・・」

とりあえず付け加えてみた。著作権?露伴?何のことです?

陸は、目に見えて落ち込んだ様子で岩陰に戻っていった。

それに立ち代り、海があきれた様子で頭を掻きながら僕の方へ歩いて来る。

陸を見ると、さっきの岩陰あたりにしゃがみ込んで地面に「の」の字を書いてる。

とりあえずそっちは放置して、海に視線を戻す。どうやら真面目な話のようだ。

「空って名前。その名前はどうやって決めたか思い出せる?」

どんな話をするかと思っていた所に、そんなことを聞かれて当惑する。

名前、名前・・・ あれ?

「思い出せないでしょ?殆ど無意識のうちに名前を『空』にしていた。違う?」

違・・・わない、のか?確かに意識して決めた覚えは無い。そもそも、今まで他のネトゲでも空なんて名前は使った試しが無い。

なら、これは一体・・・

「軽く脳を侵されて設定させられてたのよ。」

「脳を、侵す?」

考えが行き着く前に海が解答を寄越した。

そういえば聞いたことがある。一時期、この装着型ディスプレイによる視界への影響の直接性を利用したウィルスが出回ったことがあると。

感染したPCのディスプレイは強烈な光を発し、感染PCのユーザーの目と脳に多大な負荷を与えるというものだ。

中にはそれにより目を開けたまま失神し、廃人になりかけた人まで居たらしい。

かの有名な五円玉催眠術も、一定のリズムで脳に負担をかけて意識を手放させる類のものなのだから、そのウィルスを応用すればそういったことも可能なのかもしれない。

突然全てが怖くなる。脳を侵された?自由意志を奪われた?相手の思うがままに?

もしかしたら、ゲームを始めたのも、あの状態でログアウトせずに倒されようとしたのも、そして今現在ここにいるのも、すべて操作された結果なのかもしれない。

今現在この思考。これは自分の本質の意思か?あやつられた仮初の意思か?分からない、わからない、ワカラナイ・・・

不安になる。全てが全て、信じられない。己の内も外も全てが疑わしい。

怖い、怖い。自分も他人も信じられない。怖い、怖い、怖い怖い、怖い怖い怖い怖い怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い・・・

「おーい、大丈夫?」

僕の暴走した思考は海によって止められた。どうやら彼女も突然豹変した僕の様子に困惑してるようだった。

「なんか、顔青いよ?」

「あ、ああ、うん。大丈夫。ちょっとね・・・・・・」

「そう?じゃあ話を核心に持っていくわね。」

僕は、次に海が言ったことを理解出来なかった。

 

「───あなたに、協力してもらうわ。」



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