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今度は吹っ飛ばなかった。

気づけば、殴った方と反対、つまり左手で僕の右肩を掴んでいる。そのせいで、僕の首は鞭打ちのようになった。

相手はそのまま、僕を引き寄せ更に殴る。

殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。回復させる。

殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。回復させる。

殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。回復させる。

殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。回復させる。

殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。回復させる。

決して逃がさない、というように時折こちらを回復させてくる。

殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。回復させる。

殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。回復させる。

殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。殴る、殴る、殴る。

回復アイテムが切れたのだろうか、回復が止まる。もう殆ど前が見えない。

体中が痛い。くそ、殺すならちゃっちゃと殺せよ。

その意思が相手に届いたのだろうか、それともこちらの体力がギリギリなのを悟ったのか、拳が止まった。

そして、今までで一番大きく振りかぶった。とどめ、というわけだろう。

僕の手に起死回生の武器は無い。僕の所持品に起死回生アイテムは無い。僕の頭に起死回生の策は──── 無い。

ああ、負けを認めよう。潔く殺されるよ。

僕は目を閉じ、そして決めた。次にこいつと会ったら絶対に殺してやる。

不意打ちだろうがなんだろうが構わない、仕返ししてやる。

こいつの顔を脳裏に焼き付けようと、目を開ける。その時。

「なぁぁぁにやっとるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

どぐしゃぁぁぁぁという効果音と共に奴は僕をつかんでいた手を離し、飛んできた誰かによって横っ飛びに吹っ飛んだ。

激突点だったであろうそこに立つのは、僕より小さい、150cm程の矮躯の・・・ 女の子?

さっき聞こえたのは紛れも無く野太い男の声だったと思うんだけど・・・。

「野太くて悪かったな。」

唐突に、後ろから声が聞こえた。

振り返ると、さっきの声の主が笑顔を引きつらせて立っていた。

どうやら、この二人は僕が甚振られているのを見かねて助けてに来てくれたようだ。

いやはや、悪いことを言ってしまった。まぁ、助けに来たわけだ、この程度で見捨てはしないだろう。

奴は、流石に3対1(正しくは2対1だが)は分が悪いと判断したのか、逃げるように森へ走っていった。

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否、正しくは吹き飛ばされたのだ。自身は放物線を描き、20メートル程離れた位置へと落下する。

恐らく顔面を殴られたのだろう、頬が痛む。思わずここがゲームだと忘れるくらいに。

最近のゲームはここまでリアリティに富n(ry

無駄なことは考えていられない。仕様として持っていた回復アイテムを使用する。因みに一つしかない。

考えを巡らす。敵MOBとの遭遇か、しかしいくらなんでも初めていきなりプレイヤーを襲うような場所に敵キャラを配置したりしないだろう。

「始めたばかり」の「初心者」を「いきなり」・・・・・・畜生、そういうことか。内心で毒づきながら、立ち上がる。

20メートル先に立っているのは敵キャラではない。紛れも無いプレイヤーだ。

見ると、口を半月状に開いて下卑た表情を作っている。気持ち悪い。

そう、こういったゲームでは、他プレイヤーを狩るという行為も認められている場合も少なくない。

そして僕は今その餌食になろうとしている、というわけだ。

だったらどうする? この場合、僕の持つ選択肢は二つ。戦うか、逃げるか。

一応、僕は速度重視に設定してある。しかし、その速度を生む翼はまだ扱いきれない。

ならば、自然闘うしかなくなってくる。問題無い、相手も初心者だろう。

このゲームのメールの到着日時は今日の0時ジャストだった。相手もそうレベルは高くない筈だ。

相手を見据える。まずは敵の個人設定を見極めるのだ。

最初に個人で設定するのは「装備」「オプション」「能力」の三つ。

全てが仕様内では変更不可能で、命運を左右するだけあってそれぞれ大量に用意されていた。

僕の装備は「槍」、オプションは「翼」、そして能力は「限界突破」。因みに限界突破とは───

と、誰にでもなく説明口調で脳内をフル稼働させていたとき、相手に動きが生まれた。

こちらが考えを巡らせているのを恐れで動けないのだと見誤ったのだろうか。

徒手空拳だった相手の右掌に光が宿る。次の瞬間にはそこに大剣が握られていた。

まずはっきりしたのは「装備」。大剣。残るは「オプション」と「能力」。

と、思案を巡らせたところで20メートルがほぼ埋まる。

同時に胴に向けて横薙ぎの一閃。

翼の羽ばたきとバックステップでかわす。

と、次の瞬間には相手は既に剣を光と消している。そして左の拳が飛んでくる。

今度は避けられなかった。再び自身が宙を舞う。

宙を舞い、翼を羽ばたかせ、衝撃の勢いを殺し、ついでに上昇しながら槍に自分のEPを注ぎこむ。

通常、槍内部にエネルギーを注ぎ込むキャパシティは存在しない。しかし、そこに無理矢理エネルギーを注ぎ込むのが僕の「限界突破」である。

槍に注ぎ込まれたエネルギーは即座に「限界」を迎え、「突破」し、外部へと「放出」される。

槍の穂先から放出されたエネルギーは光弾と化し相手へと向かう。レベルが1の僕では確実に相手にダメージを与えられる弾となれば一発ずつが限度だろう。

案の定相手はいきなりの襲撃に面食らい、光弾は顔面へと直撃する。

衝撃を与えた角度も相俟って相手は後頭部から地面に派手に突っ込む。

と、こちらも光弾で最大エネルギーを放ったので翼に回すエネルギーが無くなり地に不時着する。

奴の頭部が直撃した衝撃で砂埃が上がり、視界がまともに掴めない。

当てた瞬間の記憶を頼りに奴の倒れている場所を探す。

ほぼ垂直に叩き込んだから、吹き飛んでは居ないはずだ。

なら、この辺だと思・・・ 

そこで、また殴られた。

手がある。

足がある。

キャラクター設定時にオプションとして装備した翼も、背に力をこめることでぎこちないながらも動く。

地に足が着いている感覚がある。

自らが武器と選んだ槍を握っている感触もある。

リアルの自分がキャラを操作するためにキーボードを叩いている感覚は────無い。

自分の精神が体から剥離させられて、そのままゲームでの肉体に乗り移ったかのような感覚。

体型は慎重160cmで細身の矮躯、ジョブは槍遣いでオプションは翼。


左の拳を握る。関節の一つ一つまで細かに動かせる。

地面を蹴る。反動が返ってくる。

やはり現実との相違は感じられない。

僕は暫くこういったゲームはしていなかったのだが、どうやらその間にこのテのゲームはここまで進歩したらしい。

・・・ログアウトはどうするんだ?

そんな疑問は、右腕の時計のボタンを押すことで氷解した。

ボタンを押すと同時に目の前の中空にウィンドウが表示され、驚きにしりもちをついたのは内緒だ。

そういえばメールにテキストファイルが添付されていた気がするが、あれは説明書だったのだろうか。

そんな自分の失態を悔やみつつ、表示されたウィンドウを弄ってみる。

装備の変更。アイテムの使用、トレード、破棄。他プレイヤーの友達登録。パーティーの編成。その他諸々。中にはログアウトもあった。

ひとまず安心。とりあえずと周りを見回してみる。

自分が居るのは草一本生えていない荒野。

後左右の三方は遠めに見ても分かるほど鬱蒼と茂る深い森が、残った前方には森よりは近く町が見える。

こういうタイプのゲームに於いては、まず町から始まるものなんだけど・・・ そう思いつつまずは町に向かう。

早めに他のプレイヤーと交流を深め、あわよくば友達登録、そして一緒にレベル上げは定石である。

そう思い、町へと一歩踏み出そうとした瞬間

 

僕の体は横っ飛びに吹き飛ばされた

「ふぅ、やっと全部終わった。」

僕はたったいま目の前にあるPCのセットアップやらアプリケーションのインストールやらを終えたところだ。

一昨日父が送ってきたもので、まだ発売していない最新鋭機らしい。

またか、と呆れる反面、嬉しくもなる。

父はPC開発事業の万年平社員で、こういったPCの試運転やデバッグなどが大量に回ってくるのだ。

といっても、実際それを行うのは8割から9割が僕で、父は普段別の仕事をしている。

別に悪いことだとは思わない。何せ無料で最新鋭機を使えるのだから、文句を言う方が罰当たりというものだ。

「父、か・・・」

そいういえばしばらく会っていないな。

PCも郵送で送られてきたものだし、たまに帰ってくるのも僕が寝てる時間で、尚且つ寝てる間にまた出勤する。

殆ど会社にいるのにPCのテストを頼まれるなんて、案外僕が代わりにテストしているのは会社内で公然の事実なのかもしれない。

っと、画面がスクリーンセーバーになってしまった。

公然の事実だろうがそうじゃなかろうが、任された仕事はきちんとこなすのが信条だ。

ワード、エクセル、パワポ、キャド、ネット、ミュージックプレイヤー、メールボックス

そこまで確認したところで、僕はある不自然に気付いた。

「あれ?メールが来てる」

おかしい、まだ僕はアドレスの登録を行っていない。

なら父が予め登録しておいたのだろうか。もしそうなのだとしたら、メールを送ってきたのは父だろう。

久々になる父とのコミュニケーション。うれしくて件名も読まず内容を見たが───

「なんだこりゃ。新感覚MMORPG、The Azure?」

がっかりしたが、内容が気になるので読んでみる。

なんでも、五感投影型フィールド、ダンジョン探索ゲームなのだそうだ。

そして僕はそのゲームのテストプレイヤーに選ばれたらしい。

最近では五感投影なんて組み込んでいるゲームもザラで、何が新感覚なのかは分からないが試運転の判断材料にもなると思ったので特に疑問も抱かず登録してみた。

現在、PCに従来のようなディスプレイはなく、ゴーグルのような物をかけ、そこに画面が映し出されるという仕組みになっている。

だからこその五感投影であり、視覚がゲームを現実と誤認するからこそゲーム内で受けた感覚が軽く五体にフィードバックするという仕組みが成立するのだ。

とまあ講釈はその辺にしておいて、早速登録、キャラクター作成を済ませてゲームを始めてみる。と、

その瞬間、

現実の僕は、

意識を失った

時はそう遠くない未来。

錬金術の大成、それによるエネルギー問題等の解決、そして人口爆発。

人は住む場所を求め木を伐り、山を崩し、海を埋めた。

勉強は殆どの子供がパソコンを通した通信制のものとなり、かつての学校は改装されアパートとなっていた。

大人の働く会社も土地不足により形が無くなり、家に居ながら情報のやり取りのみ行うものが殆どになった。

いまやインターネットは急速に発展し、いまや使用世帯数は0コンマ0001の位を四捨五入しても10割になるほど全世界の家庭に浸透していた。

そうして外に出なくなったヒトの暇つぶし、ストレス発散の場として求める場所はすでにリアルには無かった。

場所を取らず、出向く必要も無く、かつ手軽に遊ぶことの出来る遊び、ネットゲーム。

近年では凝ったものが多く、視覚、触覚、聴覚等五感の一部をゲーム内のキャラに投影するという物まで登場した。

 

そんな中、一人の男が何気なく思った。

どうにかこのゲームを使って人口を減らすことは出来ないだろうか。

何故思ったのか、それは誰にも分からない。もしかしたら神の啓示だったのかもしれないし、逆に悪魔の囁きだったのかもしれない。

しかしそんなことは気にせず男は思案を続けた。

そういえば昔、テレビから強い光が発せられ、それにより子供が倒れるというニュースを聞いたことがある。

それを強化、応用すれば簡単に大量の人間を殺す、若しくは脳に致命傷を与えることが出来るのではないだろうか。

しかし、無差別に殺すというのはやはり忍びない。殺すなら・・・そう、無能、拙劣、卑小な者がいい。

なら、どうやって有能無能、優秀拙劣、尊大卑小の区別をつける?

簡単だ、ゲームの勝者が有能で優秀で尊大なのだ。

 

そうして数ヵ月後、彼の計画は実行に移る。

しかし、いきなり実戦というのもやはり自信が無い。

そこで、まずはテストプレイということでランダムに1000人ほど抜き出すことに決めた。

無論、敗者に待つのは死というのは変わらないし、敗者のPCは敗北時に自動で内部データが全て破損、修復不可になるよう作ってあるのでアシがつく心配も無い。

時は満ちた。

ソースを最初から全て確認。

インターネットにアップ。

ランダムメールを発信。

 

そして彼の計画は始まった。明確な自分の行動原理も分からないまま。



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