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手がある。

足がある。

キャラクター設定時にオプションとして装備した翼も、背に力をこめることでぎこちないながらも動く。

地に足が着いている感覚がある。

自らが武器と選んだ槍を握っている感触もある。

リアルの自分がキャラを操作するためにキーボードを叩いている感覚は────無い。

自分の精神が体から剥離させられて、そのままゲームでの肉体に乗り移ったかのような感覚。

体型は慎重160cmで細身の矮躯、ジョブは槍遣いでオプションは翼。


左の拳を握る。関節の一つ一つまで細かに動かせる。

地面を蹴る。反動が返ってくる。

やはり現実との相違は感じられない。

僕は暫くこういったゲームはしていなかったのだが、どうやらその間にこのテのゲームはここまで進歩したらしい。

・・・ログアウトはどうするんだ?

そんな疑問は、右腕の時計のボタンを押すことで氷解した。

ボタンを押すと同時に目の前の中空にウィンドウが表示され、驚きにしりもちをついたのは内緒だ。

そういえばメールにテキストファイルが添付されていた気がするが、あれは説明書だったのだろうか。

そんな自分の失態を悔やみつつ、表示されたウィンドウを弄ってみる。

装備の変更。アイテムの使用、トレード、破棄。他プレイヤーの友達登録。パーティーの編成。その他諸々。中にはログアウトもあった。

ひとまず安心。とりあえずと周りを見回してみる。

自分が居るのは草一本生えていない荒野。

後左右の三方は遠めに見ても分かるほど鬱蒼と茂る深い森が、残った前方には森よりは近く町が見える。

こういうタイプのゲームに於いては、まず町から始まるものなんだけど・・・ そう思いつつまずは町に向かう。

早めに他のプレイヤーと交流を深め、あわよくば友達登録、そして一緒にレベル上げは定石である。

そう思い、町へと一歩踏み出そうとした瞬間

 

僕の体は横っ飛びに吹き飛ばされた

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