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否、正しくは吹き飛ばされたのだ。自身は放物線を描き、20メートル程離れた位置へと落下する。

恐らく顔面を殴られたのだろう、頬が痛む。思わずここがゲームだと忘れるくらいに。

最近のゲームはここまでリアリティに富n(ry

無駄なことは考えていられない。仕様として持っていた回復アイテムを使用する。因みに一つしかない。

考えを巡らす。敵MOBとの遭遇か、しかしいくらなんでも初めていきなりプレイヤーを襲うような場所に敵キャラを配置したりしないだろう。

「始めたばかり」の「初心者」を「いきなり」・・・・・・畜生、そういうことか。内心で毒づきながら、立ち上がる。

20メートル先に立っているのは敵キャラではない。紛れも無いプレイヤーだ。

見ると、口を半月状に開いて下卑た表情を作っている。気持ち悪い。

そう、こういったゲームでは、他プレイヤーを狩るという行為も認められている場合も少なくない。

そして僕は今その餌食になろうとしている、というわけだ。

だったらどうする? この場合、僕の持つ選択肢は二つ。戦うか、逃げるか。

一応、僕は速度重視に設定してある。しかし、その速度を生む翼はまだ扱いきれない。

ならば、自然闘うしかなくなってくる。問題無い、相手も初心者だろう。

このゲームのメールの到着日時は今日の0時ジャストだった。相手もそうレベルは高くない筈だ。

相手を見据える。まずは敵の個人設定を見極めるのだ。

最初に個人で設定するのは「装備」「オプション」「能力」の三つ。

全てが仕様内では変更不可能で、命運を左右するだけあってそれぞれ大量に用意されていた。

僕の装備は「槍」、オプションは「翼」、そして能力は「限界突破」。因みに限界突破とは───

と、誰にでもなく説明口調で脳内をフル稼働させていたとき、相手に動きが生まれた。

こちらが考えを巡らせているのを恐れで動けないのだと見誤ったのだろうか。

徒手空拳だった相手の右掌に光が宿る。次の瞬間にはそこに大剣が握られていた。

まずはっきりしたのは「装備」。大剣。残るは「オプション」と「能力」。

と、思案を巡らせたところで20メートルがほぼ埋まる。

同時に胴に向けて横薙ぎの一閃。

翼の羽ばたきとバックステップでかわす。

と、次の瞬間には相手は既に剣を光と消している。そして左の拳が飛んでくる。

今度は避けられなかった。再び自身が宙を舞う。

宙を舞い、翼を羽ばたかせ、衝撃の勢いを殺し、ついでに上昇しながら槍に自分のEPを注ぎこむ。

通常、槍内部にエネルギーを注ぎ込むキャパシティは存在しない。しかし、そこに無理矢理エネルギーを注ぎ込むのが僕の「限界突破」である。

槍に注ぎ込まれたエネルギーは即座に「限界」を迎え、「突破」し、外部へと「放出」される。

槍の穂先から放出されたエネルギーは光弾と化し相手へと向かう。レベルが1の僕では確実に相手にダメージを与えられる弾となれば一発ずつが限度だろう。

案の定相手はいきなりの襲撃に面食らい、光弾は顔面へと直撃する。

衝撃を与えた角度も相俟って相手は後頭部から地面に派手に突っ込む。

と、こちらも光弾で最大エネルギーを放ったので翼に回すエネルギーが無くなり地に不時着する。

奴の頭部が直撃した衝撃で砂埃が上がり、視界がまともに掴めない。

当てた瞬間の記憶を頼りに奴の倒れている場所を探す。

ほぼ垂直に叩き込んだから、吹き飛んでは居ないはずだ。

なら、この辺だと思・・・ 

そこで、また殴られた。

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